重要なお知らせエリアを非表示

2026/03/22 09:23

ブリット姉妹の記憶

あの日のことをよく覚えている、と語るのは姉のジョディ。妹のミミと自分はとても仲が良く、自由に過ごせる家庭で育ったという。両親はアーティストで、家の中には自然と創造的な空気が流れていた。ある日、父が「撮影しようか」と声をかけると、二人は軽い気持ちで応じた。特別な準備をすることもなく、いつもの延長のように始まった撮影だった。

写真の中の二人は、雑誌に出てくるモデルのように整えられてはいない。髪も整えず、歯には大きな矯正器具。けれどその不完全さこそが、彼女たちの自然な魅力だった。撮影中、二人は同じことを感じ、同じタイミングで笑い出す。父はその一瞬を逃さず切り取った。演出ではなく、ただそこにあった瞬間だった。

当時、矯正器具はつらい経験でもあった。夜中に外してしまうほど不快だったという。それでも長く装着していたため、特別に恥ずかしいとは感じていなかった。むしろ、大人びて見せようとする少し背伸びした気持ちも、その写真には写っている。

振り返ると、あの頃は自意識に縛られない時間だった。両親は外見ではなく、自分たちが何を考え、何を感じるかを大切にしてくれた。馬に乗り、学校に通い、家族と過ごす日々。そのなかで、ありのままでいられたことが、何よりも大きかったとジョディは語る。

一方で、妹のミミはまったく違う記憶を持っている。あの日のことはほとんど覚えていない。ただ、父はいつも自然に写真を撮っていて、それが特別なことだとは感じていなかったという。静かで観察力のある父は、壁のようにそこに存在し、気づけばシャッターを切っていた。

撮影はリビングとダイニングの間の壁で行われた。何気ない日常の空間だったが、そこが彼女たちにとっての“世界”だった。写真を見返しながら選んでいく作業の中で、どのカットがいいかを判断する感覚も自然と身についていった。

1988年、その写真は思いがけずファッションの世界へと広がる。ヨーロッパにいたミミは、『Vogue』の編集者に「コム デ ギャルソンの広告に出たことがある?」と聞かれ、自分たちの写真がそこまで届いていたことに驚いたという。

父から学んだのは、「真実を見ること」。作り込まれた美しさではなく、ありのままのリアリティを捉えることだった。たとえそばかすや欠点があっても、それを隠さず写すことに意味がある。

一枚一枚の写真に、本物の感情が宿っていること。それこそが父の目指したものだった。そしてその精神は、あの「Sisters」という写真の中にも、確かに息づいている。

ここまで読んでいただきありがとうござます。
いかがでしたか?Comme des Garçons(少年のように)と呼ばれるブランドがこの写真に出会う運命感じませんか??